青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-
ーーーー後日。
完成した映画を二人でコンテストに出品した。
出品したと言っても、夏希の部屋でパソコンを覗き込みながら二人で公式サイトから手続きをしたわけなのだが。

無事にアップロードも出来て、応募者情報も入力して……やっとひと息ついた頃、由紀は何気なく湧き上がった感情を口にした。

「映画観に行きたいなぁ……」

特に気になる作品があるわけではない。
しかし由紀が何気なく呟くと「俺も」と夏希が口元を綻ばせた。

「アウトプットばっかでゆっくり観る時間なかったけんな……今度、一緒に行こうや」

自然な雰囲気で告げられて瞳を大きく瞬いた。
すると夏希まで神妙な面持ちになって。

「なに?」
「いや、なんか初めて誘ってもらった気ぃするなって……」

今まで散々映画について語ってきたのに、ただの一度も二人で映画館へ行くことはなかったのだ。

すると夏希は椅子の背もたれに身体を預け呻いたあとボソボソと喋る。

「前は断られるのが怖くて誘えんかった。ずっと二人で行きたいと思ってたからな」

なんで、同じだったのか。

由紀が笑みを溢すと夏希はじっとりした視線を投げて、それが可笑しくて部屋に笑い声が響く。
それから二人で上映サイトを覗きながら、アレが気になる、こっちもどうかと盛り上がって。
夏希が由紀の好きな役者の出演作品を推してきたり。

そしてふと、メインキャッチ画像に映る俳優の姿をまじまじ眺めているうちにあることを思い出した。

「ーー夏希って、私が筋肉ある人が好きやからそうしたみたいなこと前に言ってたじゃん」

「ん……?おう……」

「私、別にマッチョ=好きってわけやないからね」

いっそこの際、ちゃんと訂正しておこう。
そう思って口にした。

夏希は一瞬固まって瞳を丸くする。

「え?違うん?」

「うん。なんていうか、あぁいうキャラクターって決断力と行動力がある人が多いやろ。そこが良いってだけやから」

「そうなん?俺はてっきり……」

中学時代と違って、肩周りも大きくなって、熱い胸板がロンT越しにもよく分かる夏希の身体。

まるで肉体改造に成功した某ハイスクールミュージカルのヒーローの如く、努力して鍛え上げられたのが分かる。
まさかそのモチベーションが自分だったとは夢にも思わなかったけれど。

若干困惑する夏希に、口元は思わず綻んでしまう。

「もちろん今の夏希も好きやけど、見た目だけやないよって話。ちゃんと言えてなかったから」

今度はちゃんと言葉にしよう。
あの時、”もしかして“と有耶無耶なまま通り過ぎてしまった感情を。

「夏希のこと、ずっと前からいいなって思ってたよ」

具合が悪い時にわざわざ席を移動してまで飴をくれたこと。
一人でおばあちゃんのお見舞いに行くこと。
カモフラージュのためなら学校にDVD持ち込もうとしたこと。
夢に真っ直ぐで行動し続けるところ。

教室では無口だったけれど、夏希は優しくて面白くて、たくさん努力しているのを知っていた。

そんな夏希だから……。

彼が瞳の奥で観ている世界を、一緒に観てみたいと思ったのだ。

<結>
< 35 / 35 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
ある日を境にぱったり更新が止まったWEB小説 『王太子と異世界女に二度裏切られた私は、悪辣勇者に溺愛される』 続きが気になって更新確認をしていたら召喚されました。 目の前には、吐息を荒げて歪に笑い、恍惚とした瞳でうっそり見つめてくる銀髪美麗の男性。 「――あぁ、聖女様……やっとお会い出来ました……愛しています。どうか俺を最後まで連れていって下さい」 彼は小説のヒーロー、バルトレッドを名乗り、空白の七年を経て魔王様と呼ばれる存在になっていた。 ……この人、こんなキャラだった? 本来バルトレッドは、冷徹無慈悲な悪辣勇者。 そもそも物語に“聖女”なんて登場しない。 「聖女じゃなくて、ただの読者です!」 エタった小説の世界で、様子の違う勇者に執愛されることになった紗希。 さらに様子が違うのは勇者だけでなく……更新停止の七年でヒロインもまた異なる人生を歩んでいた。 彼女を訪ねたことで、紗希はこの世界に隠された“物語の秘密”を知ることなる。 果たして紗希は、バルトを無事ハッピーエンドへ導けるのか――? -- * -- * -- 物語の筋書きを嫌う勇者 × 愛を信用できない読者  “選ばれたくない”二人の ラブコメディ 2026. 9.14〜10.6 完結 #エタ勇 -- * -- * -- ●登場人物 勇者…バルトレッド(28歳) 読者…早乙女 紗希(27歳) ※男女恋愛ものです ※主人公以外のところでGL要素有り 【続編】 エタ勇② ~ バンシーと呼ばれ警戒されていますが……ただの迷子です!~ https://www.berrys-cafe.jp/book/n1793766
表紙を見る 表紙を閉じる
※本作は『エタ勇①』の続編です※ 召喚されたのは、更新が止まった小説の世界。 「私は読者だから……」 そうやって一歩引いた立場をやめ、紗希はバルトレッドの執着ともいえる愛に向き合うことを決めた。 魔王城で起こる問題に取り組みながら、少しずつ距離を縮めていく二人。 一方、精霊信仰の根づくアデル王国では、バンシーの遺物――物語の筋書きを記したプロットメモをめぐる謎が残されていた。 そんなある日のこと、配下の悪魔ストラスが行き倒れの青年を魔王城に拾って帰ってきた。 魔王領やアデル王国のある大陸よりも遠い獣人の国からやってきたという青年カイ。 彼は明らかに日本人で、そして紗希を見て泣き始めてしまった。 「僕によく似た顔の女性に見覚えありませんか?妹を探しているんです」 カイは七年前に生き別れてしまったという妹をずっと探していたのだ。 【エタ勇 第二弾】 2026.10.10〜 -- * -- * -- 物語の筋書きを嫌う元勇者 × 愛を信用できない女 “信じたい”二人の ラブコメディ #エタ勇 -- * -- * -- ●登場人物 元勇者で現在は魔王…バルトレッド(28歳) 読者…早乙女 紗希(27歳) ※男女恋愛ものです 【シリーズ】 エタ勇① ~聖女と呼ばれ執愛されていますが……読者です!~ https://www.berrys-cafe.jp/book/n1791854
表紙を見る 表紙を閉じる
【完結しました】 ―― 聖女とは印か、それとも生き方か ―― 裏切りと救済が交差する、異世界ロマンスファンタジー。 歌で瘴気を浄化する力を持ち、王太子の婚約者である侯爵令嬢ヒストリアは、複雑な家庭環境から権力こそが唯一の拠り所だった。 しかしある日、冤罪で大聖女の印を焼かれ、辺境へと追放され存在価値を失ってしまう。 絶望の中、出会ったのは瘴気を研究するひとりの魔法使いだった。 「身投げするなら結界の中で頼む」 冷たく突き放す言葉とは裏腹に、見捨てず世話を焼き始め、その優しさに触れてゆくヒストリア。 与えられた印に縋るのではなく、自らの価値を証明することを決意するが……やがてヒストリアは聖女制度の負の側面知ることとなる。 一方、彼女を陥れた姉エリザベートもまた、王都崩壊の渦中で孤独な戦いを始めていて――。 これは、すべてを失った少女が “聖女であること”を自ら選び直す物語。 【 年上高潔魔法使い × 傲慢聖女 】 傾向:じれ恋 公開 2026/03/10~ 6/18完結 ミモザ……思いやり ◻︎◻︎◻︎ ▶︎スピンオフ(7/1:完結) 追放先で再会した初恋の男は、罪深い私を愛し続ける 〜断罪令嬢エリザベートの初恋回帰〜 (※ヒストリアの姉が主人公、断罪後の短編です) ◻︎◻︎◻︎ 主人公ヒストリアの物語は完結しましたが、この世界にはまだ未解決の問題が残されています。 再びヒストリア達の世界を舞台にした物語を書く予定がありますので、お付き合いいただければ幸いです。 ●シリーズ 第一部:傲慢令嬢ヒストリアの救済証明 第二部:ラスボス令息ロイドの迷宮踏破(時期未定)

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop