死に損ないの巫女と十年の時を刻む春楡
 これは形だけの裁判——つまり、私がなにを言ったってこの場の『真実』は変えられない。

(変えることが出来るとしたら……)

 私は、最後の望みを賭けて観覧席の両親を振り仰ぐ。

「お父様……! お願いです、お父様からも言ってください!」

「……」

「私は神様に仕え、村のために力を使ってきただけだと……!」

「……」

 いくら縋るように叫んでも、お父様は、一瞬たりとも私の方を見ようともしなかった。白州(しらす)の床に深く頭をこすりつけながら、お役人様に向かって冷酷に言い放つ。

「同心様、滅相もございません。……この者は、神聖なる社を騙り、悪魔と通じた不吉な落とし子にございます。我が一族の誇りと神意を汚した穢れ者を、我が娘と認めるわけにはまいりません」

 ようやく私の方に向けられたのは、感情のない冷たい瞳だった。

「一族の面汚しめ。我が家との縁は今この瞬間を以て断ち切る」

「……っ?」

「……お上のお裁きに従い、直ちに処刑なさってください」

「そ……んな……」

 味方のはずのお父様からの思いがけない言葉に、全身へ氷水を浴びせられた気分だった。脳みそが現実を拒否している。そうだ、私にはまだ味方が——

「お、お母様……!こんなの、おかしいです。お願いです、お母様からもなにか……」

「……」

「お母様……っ?」

 一番の理解者と思っていた彼女は、平伏したまま反応がない。そうだ。この人は昔からお父様には逆らえないんだ。小さい頃、お父様の八つ当たりで叱られる私を庇うことができず、あとから「ごめんねごめんね」と頭を撫でたような母だもの。

「……」

(あ、これ……詰んだ?)

「巫女、なずなの有罪と刑の執行をここに確定する」

 お役人様が高々と告げる。




 ——私は、二度目のバットエンドを悟った。
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