君の涙は春になる。
「知らなかった」

「興味なかったでしょ」

そう言われて、紬は返事に困った。
たしかにその通りだったからだ。

少し気まずくなって黙ると、湊が小さく笑った。

「今は?」

「……え?」

「今は、少しは興味ある?」

そんなこと、真正面から聞くなんてずるい。
紬は本を抱えたまま、目をそらした。

「普通」

「ふうん」

ぜんぜん納得していない顔だった。

図書室の窓から、西日が差し込んでいた。
静かな空気の中で、ページをめくる音だけが遠くに聞こえる。
その沈黙は気まずいはずなのに、なぜか嫌ではなかった。

「この前」

先に口を開いたのは湊だった。

「少しは眠れた?」

紬は目を見開いた。
あの雨の日のあと、家に帰ってから、久しぶりに泣き疲れて眠った。
深く、静かに眠れた。
朝起きたとき、胸の痛みが消えたわけではなかったけれど、少しだけ呼吸がしやすくなっていた。

「……うん」

「そっか」

「朝比奈くんのおかげ、かも」

言ってから、恥ずかしくなった。
こんなの、ほとんど告白みたいじゃないかと思ったからだ。

けれど湊は変に受け取ることもなく、ただ静かに言った。

「ならよかった」

その言い方がやさしくて、紬はまた泣きそうになる。
この人の前では、どうしてこんなに心がゆるんでしまうのだろう。

「朝比奈くんは」

気づけば、紬のほうから聞いていた。

「つらい日とか、ないの」

湊の表情が、ほんの少しだけ止まった。

訊いてはいけないことだったかもしれない。
そう思ったとき、彼は視線を窓の外へ向けた。

「あるよ」

短い返事だった。

「でも、慣れてるから」

慣れる。
その言葉が、紬の胸にひっかかった。
つらいことに慣れるなんて、本当はおかしい。
悲しいことは、何回経験しても悲しいままのはずだ。
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