君の涙は春になる。
「慣れたら、平気になるの」

そう聞くと、湊は少し考えるようにしてから答えた。

「ならない」

その声は、驚くほどまっすぐだった。

「平気なふりが上手くなるだけ」

紬は息をのんだ。

それは、あの日自分が思ったことと、同じだったからだ。

痛みは消えない。
ただ、泣き方が上手になるだけ。

誰にも言っていないその気持ちを、朝比奈湊も知っている。
その事実が、紬にはどうしようもなく切なくて、でも少しだけうれしかった。

「……一緒だ」

小さくこぼすと、湊が紬を見る。

「何が」

「私も、そう思ってた」

しばらく、目が合った。

図書室の静けさが急に濃くなる。
遠くで司書の先生が本を整理する音がして、それが現実に引き戻してくれるまで、紬は呼吸の仕方を忘れていた。

「白石」

「なに」

「今度また、つらい日が来たら」

雨の日に聞いたのと同じ言葉の続きみたいに、彼はゆっくり言った。

「ひとりで我慢しないで」

胸がきゅっと痛んだ。
やさしさは、ときどき涙より苦しい。

「朝比奈くんも」

紬は勇気を出して言う。

「朝比奈くんも、我慢しないで」

すると湊は少しだけ困ったように笑った。

「難しいこと言うね」

「だって、ずるい」

「ずるい?」

「私には言うのに、自分は平気なふりするの」

湊はすぐに答えなかった。
その代わり、ほんの少し目を細めて、やわらかく紬を見た。

「白石って、思ってたより強いんだ」

「強くないよ」

「ううん。強い」

そんなふうに言われたことは、あまりなかった。
紬は昔から、どちらかといえばおとなしくて、我慢強いねと言われることはあっても、強いねと言われることは少なかった。

でもその日、朝比奈湊にそう言われたことが、なぜか心に残った。
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