イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
悠生はしばらく黙っていた。
やがて、ふっと力の抜けたみたいに笑う。

「そっか」

短い。
でも、そのひと言にいろんな感情が混ざっていた。

「なんとなく、わかってた」

そう言って、悠生は軽く肩をすくめる。

「紬、朝比奈のこと見るときだけ、目が全然違ったし」

紬の目から涙がこぼれそうになる。

「ごめん」

「謝んなくていいよ」

今度の声は、ちゃんとやさしかった。
少しだけ寂しそうで、それでも紬を責める響きはなかった。

「好きになったのは俺の勝手だし」

そう言える悠生が、かっこよくて、余計に苦しい。

「ただ」

少しだけ笑って、続ける。

「やっぱり負けるのは悔しいな」

そのひと言に、紬はとうとう目を伏せた。
やさしいぶんだけ痛い。
ちゃんと返せない好意ほど、胸に残るものはない。

「でも、紬がちゃんと選んだなら、それでいい」

悠生はそう言って、ほんの少しだけ紬の頭をくしゃっと撫でた。

「幸せになって」

そのやさしさに、紬は泣きそうなまま小さくうなずく。

「……ありがとう」

悠生は最後に一度だけ湊を見る。
その視線には、悔しさも、諦めきれない気持ちも、少しだけ託すような色もあった。

「朝比奈」

「なに」

「ちゃんと大事にしろよ」

湊の目がわずかに揺れる。

「じゃないと、ほんとに奪うから」

冗談みたいな言い方だった。
でも、その奥に本気が少し残っているのがわかった。

そう言い残して、悠生は教室を出ていった。

扉が閉まる音がして、やっと空気が動き出す。
でも今度は、紬と湊のあいだに別の緊張が落ちた。
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