イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
教室には、もうふたりだけだった。

夕焼けが少しずつ薄くなっていく。
さっきまでの張りつめた空気とは違う。
けれど、それ以上に苦しい沈黙だった。

紬はまだ胸がどきどきしていた。
選んだ。
ちゃんと口にした。
もう引き返せない。

「白石」

湊が名前を呼ぶ。
その声が少しかすれていて、紬の心臓が強く跳ねた。

「……うん」

「今の」

そこで言葉が止まる。
いつもの湊らしくない。
落ち着いているようで、全然落ち着いていないのが伝わってくる。

「ほんとに、俺でいいの」

そのひと言が、あまりにも切なかった。

紬ははっと顔を上げる。

「よくないわけない」

「でも俺、まだ何も返せてない」

「返してるよ」

「返せてない」

湊は苦しそうに笑った。

「好きだって言ったくせに待たせて、ちゃんとつなぎ止めもしなくて、今日だって悠生がいなかったら、まだ言えてなかったかもしれない」

その不器用さごと、好きだった。
まっすぐすぎるところも、怖がりなところも、全部。

「それでも」

紬は一歩だけ近づく。

「それでも、私が好きなのは朝比奈くんだよ」

湊の目が揺れる。
その揺れが大きすぎて、紬まで泣きそうになる。

「ずっと、そうだった」

言いながら、とうとう涙が落ちた。

「苦しくても、会えなくても、嫉妬されても、待つのがつらくても、それでも好きだった」

声が震える。
でも、言えてよかったと思った。

「だから、私が選びたかったの」

湊は何も言わない。
ただ、紬を見ている。
その目が熱くて、やさしくて、どうしようもなく好きだった。
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