イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
外では、部活帰りの誰かの声がした。
日が落ちて、教室の中の色が少しずつ夜に近づいていく。

その中で、湊がそっと手を伸ばした。

指先が、紬の手に触れる。

やさしい。
確認するみたいに、少しだけ震えている。
でも、今まででいちばん確かな触れ方だった。

紬も、そっと握り返す。

すると湊は、苦しそうなくらい甘い目で紬を見た。

「もう待たせたくない」

その声に、胸が高鳴る。

「白石」

名前を呼ばれる。

「好きだよ」

夏祭りの夜より、ずっと近くで。
ずっとはっきり。
もう迷いのない声だった。

紬の目から、涙がこぼれる。

「私も」

やっと、それだけ言えた。

好き。
たったそのひと言で、今までの苦しさが全部消えるわけじゃない。
家のことも、悠生の気持ちも、これから先の不安も残っている。
それでも今、この恋にはちゃんと名前がついた。

ふたりのあいだにあった長い長い待ち時間が、ようやく報われた気がした。
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