イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
窓の外は、もう夕焼けから夜へ変わり始めていた。

図書室にいる生徒も少なくなって、空気がさらに静かになる。
そのぶん、言葉ひとつが近い。

「白石」

名前を呼ばれて、紬は顔を上げた。

「この前、悠生に言われたこと、ずっと残ってる」

「ちゃんと大事にしろって?」

「うん」

湊は少しだけ苦く笑う。

「言われなくても、そのつもりだったけど」

その続きが気になって、紬は黙って待つ。

「でも、ちゃんとできてるかは自信ない」

その正直さが、やっぱり湊らしい。

「忙しい日もあるし、余裕ない日もあるし、白石を不安にさせることもあると思う」

紬は小さく首を振る。

「それでもいいって言ったよ」

「うん。だから甘えてるのかもしれない」

その声が少し弱くて、紬はたまらなくなった。

「甘えていいよ」

湊が目を上げる。

「ひとりで抱えないで。私、ちゃんとそばにいたい」

しんとした空気の中で、その言葉だけがやわらかく落ちた。

湊はしばらく何も言わなかった。
でもやがて、ほんの少しだけ困ったみたいに笑う。

「そういうこと、簡単に言う」

「だめ?」

「だめじゃない」

そのあと、低い声で続ける。

「好きが増えるから困る」

そのひと言で、紬の顔が一気に熱くなった。
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