君の涙は春になる。
その日も、紬は図書室の窓際の席で本を読んでいた。
雨が降る前の空気は少し重くて、窓の外の紫陽花が静かに揺れている。
向かいの席に、いつの間にか湊が座っていた。
紬が顔を上げると、湊は開いたままの文庫本から目を離して、少しだけ首をかしげる。
「読むの、早いね」
「白石が遅いだけかも」
「そんなことないよ」
「じゃあ、俺が待つのに慣れてるだけ」
その言い方があまりにも自然で、紬は一瞬意味を飲み込めなかった。
けれど数秒遅れて、胸の奥が熱くなる。
待つのに慣れてる。
それはつまり、今までも待ってくれていたということだ。
「……いつも待ってくれてたの」
「うん」
「なんで」
湊は本にしおりを挟みながら、なんでもないことのように答えた。
「一緒に帰りたかったから」
紬は声をなくした。
言い方は静かなのに、心臓だけが大きく鳴る。
こんなの、反則だと思う。
特別な顔もせず、甘い声を出すわけでもなく、ただ事実みたいに言うから、余計に胸に残ってしまう。
雨が降る前の空気は少し重くて、窓の外の紫陽花が静かに揺れている。
向かいの席に、いつの間にか湊が座っていた。
紬が顔を上げると、湊は開いたままの文庫本から目を離して、少しだけ首をかしげる。
「読むの、早いね」
「白石が遅いだけかも」
「そんなことないよ」
「じゃあ、俺が待つのに慣れてるだけ」
その言い方があまりにも自然で、紬は一瞬意味を飲み込めなかった。
けれど数秒遅れて、胸の奥が熱くなる。
待つのに慣れてる。
それはつまり、今までも待ってくれていたということだ。
「……いつも待ってくれてたの」
「うん」
「なんで」
湊は本にしおりを挟みながら、なんでもないことのように答えた。
「一緒に帰りたかったから」
紬は声をなくした。
言い方は静かなのに、心臓だけが大きく鳴る。
こんなの、反則だと思う。
特別な顔もせず、甘い声を出すわけでもなく、ただ事実みたいに言うから、余計に胸に残ってしまう。