イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
「うん。悠生くん、今日転校してきて」

紬がそう言うと、湊の目が悠生へ向く。

悠生は軽く会釈して、すぐに笑った。

「どうも。紬の幼なじみです」

その言い方が、なぜだか少しだけ強く聞こえた。

湊は数秒黙ってから、小さくうなずく。

「朝比奈です」

それだけ。
でも、静かすぎる空気の中で、その短いやりとりはやけに鋭かった。

悠生が紬を見る。

「紬、このあと時間ある?」

「え」

「せっかくだし、少し寄り道しない?」

返事に困っていると、湊の指先がわずかに動いた。
何か言いたそうなのに、言わない。
その沈黙が、逆に苦しい。

「今日は」

気づけば、紬は先に口を開いていた。

「今日は帰るね」

悠生が少しだけ目を丸くする。
でもすぐに笑った。

「そっか。じゃあまた明日」

「うん。また明日」

悠生が手を振って去っていく。
その背中を見送ったあと、紬はゆっくり湊を見た。

彼はまだ、どこか苦しそうな顔をしていた。
< 87 / 118 >

この作品をシェア

pagetop