イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
紬は小さく息を吸った。
そして、勇気を出して言う。
「じゃあ、ちゃんとして」
湊が目を見開く。
「私のこと取られたくないなら、ちゃんとつかまえてよ」
言った瞬間、顔が熱くなる。
こんなの、ほとんど告白の催促みたいだった。
でも、もう曖昧なまま揺れているだけじゃ苦しかった。
湊はしばらく何も言わなかった。
その沈黙に、紬の心まで震える。
やがて彼は、ほんの少しかすれた声で言った。
「……今すぐ言ったら、勢いになる」
「それでも」
「だめだ」
静かだけど強い声だった。
「ちゃんと、逃げないで言いたい」
その答えに、紬は切なさと愛しさを同時に感じた。
やっぱりこの人は、簡単に甘い言葉だけをくれない。
でもだからこそ、信じたくなる。
「じゃあ」
紬は彼を見上げる。
「それまで、教室では私のこと見失わないで」
湊の目がやわらぐ。
「見失うわけない」
その返事が、うれしくてたまらなかった。
そして次の瞬間。
教室の扉が少し開いて、悠生が顔をのぞかせた。
「紬、先生来る」
その声で、ふたりははっと現実に戻る。
「今行く」
紬が返事をすると、悠生は一瞬だけ湊を見てから、何も言わずに引っ込んだ。
教室へ戻る短い道のり。
並んで歩くこともできず、少しだけ距離を空けたまま進む。
それでも、さっきまでとは何かが違った。
湊はもう、ただ耐えるだけじゃなくなった。
ちゃんと嫉妬して、ちゃんと独占したいと思っている。
それを知れたことが、痛いほど嬉しい。
席に戻ると、悠生がいつも通り笑って「話終わった」と聞いてきた。
紬はうなずくだけにした。
でもその瞬間、前の席の湊がわずかに振り向く。
一瞬だけ目が合う。
その視線は静かなのに、はっきりと熱を持っていた。
教室で初めて見せた独占欲。
それは甘くて、苦しくて、でも確かに恋だった。