イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
その日、紬は教室の後ろで模造紙に文字を書いていた。

クラスの出し物は喫茶風の展示になっていて、看板や飾りつけの担当が必要だった。
細かい作業が好きな紬は、自然とそちらへ回っていた。

「紬、そこ押さえて」

後ろから悠生に言われて、紬はテープの端を指で押さえる。

「ありがとう」

すぐ横で、悠生が身を乗り出す。
近い。
またそう思ったけれど、今は作業中で避けられない。

「字、きれいだな」

「ふつうだよ」

「いや、昔から丁寧だった」

そんな会話をしていると、教室の反対側から視線を感じた。
見なくてもわかる。
たぶん、湊だ。

意識した瞬間、紬の指先に力が入る。
失敗したくないのに、心だけが落ち着かない。

「紬」

悠生が、少しだけ声のトーンを落とした。

「最近さ」

「なに」

「前より、よく誰かのこと見てるよね」

そのひと言に、紬の手が止まった。

「え」

「気づいてないと思ってた?」

悠生は笑っていなかった。
やわらかい声なのに、目だけがまっすぐだった。

「俺、昔から紬のこと見てたから、そのくらいわかる」

胸がどくんと鳴る。
この空気はまずい。
そう思うのに、うまく動けない。
< 97 / 118 >

この作品をシェア

pagetop