精霊に愛された少女は、最強魔術師に見つかった

「少しずつ変わっていくこと ⑥」

 ソルベシア様との交流は時折続けられている。もちろん、会う回数はそこまで多いわけじゃない。


 ソルベシア様はお忙しい方だ。
 それこそ本来なら私と会う時間を作ることが難しいぐらいには。
 私もソルベシア様と何度も会うことは避けたかった。だってこのことが露見したら大変な騒ぎにはなってしまう。
 すくなくとも義母や妹は、「どうしてパルフィアなんかを?」と驚愕し、妹のことを売り込もうとすることだろう。



 ソルベシア様は彼女達の想像する理想の結婚相手だろうから。……ソルベシア様は私に興味を抱いて、私に会いにきてくれている。
 私はそのことがなんだか、嬉しかった。
 私個人に興味を持ってくれている方なんて、これまでいなかったから。

 そしてただ個人的に仲良く話せることは嬉しいなと思っていた。
 だからもしソルベシア様がハウレワの方と仲良くするようになって、私とお喋りをしなくなったら……寂しいなとそうも感じてしまった。




 ……本来、ソルベシア様は私なんかと仲良くしてくれることとが奇跡のようなことなのにな。
 ハウレワはより良い結婚相手を見つけることが一番の目的であるらしい。




 その先のことなんて考えても居ない。それに相手がどういう人間であるのか、その性格なども考えることはない。おそらくその肩書だけで、ハウレワも義母も判断しているのだ。



 ソルベシア様のことを、隣国最強の魔術師としての地位だけでハウレワ達が見るかと思うと少しだけ何とも言えない気持ちになった。
 ……交流を深めてまだそんなに時間は経過していない。会ったのなんて、数えられるだけだ。
 だけれども私はソルベシア様は最強の魔術師である以前に、話していて楽しい方なのにとそう思った。
 そもそもソルベシア様が素晴らしい魔術師でなければ、私の存在に気づくこともなかったのにそんなことを考えてしまった。



 ほんの少しだけ……私はソルベシア様の影響で、笑みを浮かべることが多くなってしまっているらしかった。



 ハウレワや周りの侍女達には、訝しがられた。
 ハウレワなんて私がそう言って楽しそうにしている原因を探ろうと必死らしい。私が楽しそうにしていることが気に食わない様子だった。
 ……ソルベシア様と話すことは楽しいけれど、こうして少しでも私に変化があるとハウレワが気にするから少しだけ冷めた気持ちになる。


 ――私は幸せになってはいけないのだと、そんな風に彼女達は思っている。
 私はソルベシア様とのことを、ハウレワにバレたくなかった。



 折角楽しい時間を過ごせているのに邪魔をされたくなかった。ソルベシア様と話す楽しい時間は限られているのだからそれをどうのこうの言われるのも嫌だった。



 ……ああ、でもソルベシア様は公の場ではハウレワと仲良く喋るんだろうな。
 あの人にも、立場があるのだから。



 私はほとんどパーティーなんかに参加することはない。
 参加するのは、義母やハウレワが私のことを嘲笑う場として用意したパーティーだけだ。
 私が少しでも周りからもてはやされることを二人は望んでいない。だから私はお母様が亡くなって以来、まともなドレスを着てパーティーに参加したことなんてない。



 卒業して、自由になれたら……私は平民として生きることになるだろうからそんなドレスを着る機会なんてなくなるだろうけれど。
 私が居なくなっても、家の者達は気にすることはないだろうとは分かっている。
 私が精霊と仲良くしていることは、彼等にはばれていないから。……知られていたら何が何でも利用しようとしただろう。





 駄目だな、と思うけれどソルベシア様との交流が楽しくて、少しだけ私は以前と様子が異なるらしい。



 教室で私のことをこそこそと話している生徒達が「不気味だ」とそう口にした。
 私は伯爵令嬢という立場なのに、それよりも身分の低い家の生徒達にだってこうして馬鹿にされたような態度を取られたりする。
 本来ならそれを怒るべきなのだろう。でもそんな風に事を荒げる気は今のところ私にはない。



 魔法の授業の際も、私はなるべく出力を落としている。
 今の所、そうして力を抑えていることは誰にもばれていないはずだ。教師陣の中にも、ハウレワを特別視する者達は多い。
 精霊に愛されている、というのはそれだけこの国では特別なことなのだから。
 その中には私を下げて、ハウレワのことを持ちあげる者達もそれはもう多い。


「ハウレワ様の姉でありながら、その程度の魔法しか使えないなんて」

 そう言って小馬鹿にされることにも慣れているはずなのに、最近では少し気になってしまった。


 ……それはソルベシア様と話すようになったからかな。
 だってあの人は、私の意思を尊重してくれているから。きっと私が馬鹿にされているような場に遭遇したら怒ってくれるだろうと想像もできるから。



 駄目だな、少なくとも家を出るまではそんなことを気にしない方がいいのに。
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