精霊に愛された少女は、最強魔術師に見つかった

「少しずつ変わっていくこと ①」

 表面上は私の生活は何一つ変わっていない。


 学園に通い、誰とも交流を持つことなく過ごしている。私は友人を作っていない。……人と交流を持つことも得意じゃない。
 精霊を視ることが出来、話すことが出来ること。
 それを隠しながら人と接することは中々難しい。何かの拍子にばれてしまったらどうしようとか、そういう悪い想像ばかりをしてしまうから。
 私は姿かたちも偽っていて、自分の本当の姿を表には出していない。……その状況って、少しやりにくい。精霊に関することは隠さなければならないことは仕方がない。
 でもそれ以外のことは隠さずに生きられるようになれたら、楽なのになと思う。


 義母や妹のことを気にすることなく生きて居られたらってそればかりを考えているから。




「パルフィア、これをやっておいて」
「分かったわ」


 私が席に腰かけていると、他クラスからハウレワがやってきてそう言った。


 ハウレワは面倒事は私に任せることも多かった。
 ハウレワの望みを叶えなかったら、私は罰を受けることも度々あった。精霊達のおかげでそこまでの大きな問題は起こっていないけれども……。ハウレワは努力家ではある。ただしそれはあくまで好きなことにだけだ。




 自身の興味のないことはまずやろうとしない。将来のことを考えたら、嫌なことをやることも覚えた方がいい気はしている。まぁ、精霊に愛されていて、精霊にとって特別な少女としてこれからも生きていくのならば好きなことだけをしてもいいかもしれないけれど。
 ただハウレワの功績の一部は、少なからず私が行ったことも含まれている。というか私だけじゃなくて、他の人のやったことも含まれているはずだ。



 ……私以外の人達は、望んで功績を差し出していると聞いている。それは精霊という存在が、この国にとって特別だから。
 精霊と直接交友を深められるというだけで、それこそ神にも等しい存在だと同一視している者達は多い。
 周りがそうやってもてはやすからこそ、ハウレワは自身が誰よりも特別な存在で、自分の望みはなんだって叶えられるのだとそう思い込んでいる。


 ハウレワは私のことを嫌っているし、よくしてもらったことはない。だけれどもそのまま突っ走ってしまって大丈夫なのかと姉としては心配になる。彼女は私のことを姉妹だなんて認識はしていないだろうけれど。良くて使い勝手の良い駒か何かかしら。
 私はそういう態度もされたくない。
 そもそも特別視されるが故に行動を制限されたりするのも望んでいない。
 ハウレワは何も考えずに、この先の未来が明るいものだと思っていることだろう。ただ私は同じ立場になっていたらきっと沢山悩んだだろうなと思う。



 周りにいる人たちがどういう思惑で自分に近づいてきたのかとか、そのことも沢山思考してしまったと。ハウレワが周りからの好意を疑いもせずに受け入れている点は、凄いなと思ったりする。



 ……私は自分の力を公にする気はない。
 そもそも本当は誰にも言うつもりはなかったのだ。ソルベシア様にはたまたまばれてしまったけれど、私は自分の力を胸に秘めて、さらすつもりはない。
 けれどもし……ハウレワ以上に精霊と親しくする存在が産まれたら、彼女の立場はまた変わるだろう。



 現在、ハウレワに忠誠を誓っている様子の方々も、そちらを優先するなんてこともあるかもしれない。
 そんなことが起こったら……ハウレワはきっと耐えられないだろうな。
 じっとハウレワを見ながらそんなことを考えていたら、彼女の傍の精霊が私と目が合い、笑う。


 ああ、もっとちゃんと私に関わろうとしないでねってお願いしないと。
 ハウレワと接触している精霊達にもきちんとお願いをしているけれど、ときおり私に気づいて話しかけてこようとする精霊は居なくはない。




 私は静かに暮らしたい。
 ……自由になれたら、今よりも目立つ行動は起こすかもしれない。少なくとも姿かたちは隠さないだろう。
 ただ、今、それをするのはリスクがある。


 もっと精霊たちと、周りの目を気にせずに遊べたらって思わなくはない。きっと精霊たちともっと沢山遊べたら楽しいだろうなと。
 でもそれも、やってしまった後にきっと後悔をするから私は一旦その欲求はおさえておくことにした。



 この国から出るまでの辛抱。
 それまではハウレワ達に邪魔をされないように、いつも通りの日常を送るだけ。
 自分の力のことを悟られてはならない。目立つ真似をしたらいけない。……仮に私の方が精霊と仲良くしていると知られたらハウレワが何をしでかすかも分からない。この国の王家が何をするかも分からない。
 だから、あくまで慎重に。


 そう思って過ごしている私だけれども、ソルベシア様に見つかってしまったのもあって少なからず日常に変化はあった。



 手紙が届いた。
 誰にも悟られないように、私の元へと届けられた手紙。
 ソルベシア様からの、お誘いの手紙。


 ……私とまた、話したいのだって。
 そんなことが書かれていた。
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