もう戻れない




法「降りてみてください」


「うん」




言われるがまま法戸くんの手から離れて、冷ややかなコンクリート製の階段を降りていく。私の足音が地下に響き、そこに広がる景色に感嘆した声も響いた。




「射撃場?」


法「正解です。影宝会は銃を全員持ってるので、練習のためにここで実弾を使って撃ちます」


「私、ここ来るの初めて」


法「会長には、沙和さんをこの部屋には絶対入れないようにって言われてました。沙和さんを危険な目に遭わせたくないって」




会長がいない今、秘密で連れてきてくれたということか。




「何でここに連れて来てくれたの?」


法「会長と秀さんを撃った銃がここにあるからです」




いつもふにゃっとして何も考えていなさそうな法戸くんが、私と晃輝に車で話をしてくれた時と同じ、表情を変えて真剣モードに。




「お父さんが撃たれた銃は、机の上にあったものじゃないの?警察もそれだって言ってたから、そうだと思ってたけど」


法「机の上にあったものは、最大三発入る銃ですが、元々二発しか入っていない銃でした。事件の後、警察が調べているのを横目で見たら、二発のままでした」


「何で元々二発だって分かるの?」


法「会長に二発装填しておくように言われたので」


「撃った後に、誰かが一発入れ直したのかもしれないよ?」


法「装填は僕の役割なので。僕は弾の管理を任されていたので、僕以外に弾を装填できる人はいません」




弾の管理を限定していたのは、初耳だった。それに、その役割を何故法戸くんにさせていたのか、誰が決めたのかも気になる。会長が一番の若手に、弾の装填と管理を任せるだろうか。




法「今、何で僕が管理を任されてるのかって思ってます?」


「さすがエスパーだね」


法「エスパーなんて。訓練しただけです」




一番の若手とは言うものの、技術は一人前。見くびってはいけない。




法「僕が管理をしているのは、秀さんに推してもらったからです。管理するのが好きで、自分の家は整頓されてます。それを秀さんが見て、事務所の物の管理も任せたいって言ってくれて。その役割もあって影宝会に入らせてもらえたので」




秀くんのことだろうから、ひと目見て法戸くんを採用したんだろう。法戸くんが懐く理由も分かる。




「この部屋は、警察には調べられなかったの?」


法「調べられましたよ。銃の申請してますから、出さないと怪しまれます」


「法戸くん以外の指紋はついてなかったの?」


法「それが僕のだけで…。でも、弾の装填は会長が殺された日の朝にしていて、全て満タンのはずだったんです。この銃だけは二発減ってました」




事件が終わって、この事務所に戻って来た銃の中から一つの銃を持ち上げると、マガジンを開けて見せてくれた。



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