もう戻れない
澤「でも、今ここでこんな話をしてしまったので、俺が会長に認めてもらえないことに腹を立てて殺したって思われかねないですね」
「…先に言うんだね。それも戦略とか?」
澤「さぁ、どうでしょう?(笑)」
整った横顔から少し見えるホワイトニングされた歯。無口で表情も変わらない澤村さんと、同じ話をして笑ったのは初めてだった。でも、この会話で澤村さんが犯人から除外されることはない。
「止めて話させて、ごめんなさい。別荘に向かってくれる?」
澤「承知しました。すぐ着きます」
澤村さんの運転は無駄がなく、舗装されていないガダガタの道も振動が伝わらないように、でもスムーズに着くように運転してくれた。
そろそろ別荘に着く頃、貴裕が近くにいると結託して答えを合わせそうだったので、弾のことを今聞いてみることにして、また腰を上げる。
「この前地下室を初めて見たんだけど、私の知らない銃がいっぱいあったの。澤村さんたちも、あれで撃つ練習してるの?」
澤「そうですよ。実物で練習しないと、実践もうまくいかないですから」
「まさか、空砲で練習してないよね?あの部屋に、弾が見当たらなかったんだよね」
澤「弾か…。俺も知らないんですよね。でも撃つ時は実弾じゃないと、的に当たったかなんて分からないので、装填する人がいるんだと思います」
それとなく惚けて聞いてみたけど、バレなかったみたい。誰が管理しているか知らないということは、特定の誰かを陥れようとしているわけでもない。となると、澤村さんは犯人ではない?
腕組みをして考えていると、ガクンと体が前のめりになって車が止まり、一緒に頭の中の考えが消えていった。
澤「お待たせしました」
「ありがとう」
晃「…あざした」
私には使えないと言われ、澤村さんには下の下と言われ。少し可哀想にも見えてきた晃輝の丸まった背中を押して家に入り、リビングまでなかなか辿り着けない長い廊下を進む。
「みんな探り合ってるから、酷い言い方するんだよ。気にしないのが一番だからね」
晃「…沙和さんの〝使えない〟も探ってるから?」
「それは…、ごめん。言い過ぎた」
いつも私を威勢良く怒る晃輝は、どこへいったのか。澤村さんの言葉が余程刺さったらしく、貴裕に話を聞くのに、〝俺は聞き役に徹する〟と言い出した。兄だから先入観のない晃輝にお願いしたかったけど、無理そう。
リビングへと続く扉を開けると、中は誰もいないかと思うほど静かで、重たい雰囲気を醸し出していた。