もう戻れない




事務所で法戸くんに、銃のことを聞いた日。同じ場所に戻れば、あの時は見えなかった証拠が見つかる気がした。


プロ並みの腕前で、頬が落ちそうになるほどの絶品を頬張った数十分後、法戸くんの運転で森を抜けて影宝会の事務所に到着。




「法戸くん。地下室まで案内してもらっても良い?」


法「喜んで」




澤村さんが地下室で練習に使った銃を、もう一度よく調べたい。法戸くんに先導してもらい、私を挟んで澤村さんがついてくる。会長室横の廊下を通って地下室に着くと、以前と変わらない場所に銃が積み上がっていた。




「この銃の中で一つだけ、弾が二発減ったらしいのね。これを、澤村さんがここで使ったっていう証拠が欲しいの」


法「発射残渣を調べたら分かるんじゃないですか?」


澤「数時間で消えるから、それは無理だ。それなら硝煙反応の方が確実じゃないかと思うけど」


「服とか手に付くっていうやつ?」


澤「それです。その時の服を調べたら、俺が使った証拠が出るんじゃないでしょうか」




でもそれだけだと、澤村さんがこの銃を使ったことだけが分かって、犯人からは除外しきれない。もっと確実な証拠が欲しい。首を捻って腕を組むと、法戸くんが閃いたように饒舌になりだした。




法「日を分けて2回使ったのなら、硝煙反応の出方が変わるはずです。澤村さんが銃を使ったことに変わりはなくても、薄い反応と濃い反応があれば犯人になりますが、そうじゃなかったら地下室で使った証明になります」


澤「…なるほど。確かに」


「じゃあ、どうせなら全員集めて調べる?集まれるならの話だけど」





全員が同じ空間にいて、私のそこにいるなら安全地帯になる。もし本当の犯人がいて反逆されても、複数じゃなかったら問題ない。




澤「全員集まれると思いますよ。召集かければ良いだけですから。今週末の土曜日にしますか?」


「うん、ありがとう。あともう一つ。澤村さんはここにいて、銃撃音とか聞いてない?」


澤「そうですね…。ここは防音室なので、閉め切って使った場合、地下室から地上の音は一切耳に入りません。地上からも、地下室で銃を使っていても、音は聞こえません」


「地下室にはどのくらいいた?」


澤「二発撃ったんですけど、体で上手く衝撃を吸収できなくて、すぐにやめました。なので、五分もいなかったんじゃないですかね」




会長室の横を通って、地下室に入って五分。澤村さんが地下室から出てくるまでに、会長を撃てるとしたら、さくっと部屋に入って驚く間もなく撃って部屋を出るしかない。



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