もう戻れない




みんなの安否も確認できたし、協力体制も作った。晃輝と二人だけで探すよりは、効率は上がるだろう。




法「お二人で帰られるのは危ないです。誰か付けてきていたら、どうするんですか?」




法戸くんの癖、私への極端な姫扱い。晃輝がいるから、大丈夫なのに。影宝会には入っていなかったけど、秀くんを一番近くで見ていた晃輝なら、守り方は心得ているはず。それに、晃輝の方が安心できる。




貴「法戸に送ってもらえ。車は置いて行って、落ち着いたらまた取りに来たら良い。今日は甘えておけ」


「…分かった」




貴裕に言われたら、従うしかない。満足気に車の鍵を私たちに見せてきた法戸くんに付いて、影宝会の社用車に乗った。




「晃輝…。これも罠とかないかな?」


晃「分からない。今は全部が罠に思える。あまり信じない方が良いとは思ってるけど」


「そうだよね。やっぱ…、そうだよね」


法「お待たせしました。それぞれの家までで、良いですか?」


「うん。ありがとう」




人懐っこい笑顔をミラー越しに見せて、走り出した黒のワンボックスカー。芸能人の送迎車みたいに、後部座席の窓ガラスにマジックミラーが使われていて、守られているのがすごく伝わる。


森を抜けて一般道に出ると、法戸くんが突然ハザードランプをつけて、車を停めた。晃輝と二人身構えて、法戸くんの一挙手一投足を見守る。




法「あの…、お二人に話があります」




隣の席から、唾を飲み込む音がはっきり聞こえてきて、緊張が張り詰める。




法「信じてもらえないのは、分かっていて話します。きっと何を話しても、罠としか思えないんでしょ?」


「…まぁ、今はそうだね」


晃「話の内容によるかな」


法「会長が殺された日のことです」




影宝会の人たちは会長が育てただけあって、本当に洞察力がある。藤吉さんは影宝会に入って長いから、新人の法戸くんとは比べ物にならないくらいだけど。




法「会長から地区の見まわりをするように言われたんです。いつもは会長から直接指示はもらわずに、自分の判断なんですけど、その日だけ急に行くように言われて、不思議でした」




全身をこちらにむけて、神妙な雰囲気で言葉を探す法戸くん。話し方、目線、構え。他にも武術を学んで、嘘が嘘だとバレない術を習得する。本当のようにも聞こえるけど、この言葉も罠の可能性は大いにある。

でも私も同じように術を学んできた者として、ある程度の観察眼は備わっている。普段の法戸くんを知っている私が見ても、嘘をついているようには見えなかった。



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