京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜
 寧々がシャワーを済ませると、既に伊織は終わっていたらしく待ってくれていた。
 寧々の姿を見つけて嬉しそうに微笑む伊織はどこか可愛らしい。

「お待たせ」
「俺もさっき終わったばかりやから、気にせんでええよ」

 車に戻り、荷物を詰めていく。楽しい時間は終わるのが早いもので、気持ちがしぼんでいくのがなんだか寂しい。
 寧々は助手席に乗り込み、伊織が運転席に座る。鍵を差し込んでもエンジンをかけない伊織を不思議に思いじっと見ていると、端正な顔が近づいて来た。寧々は瞼を閉じ、キスを受け入れる。何度か触れるだけのキスをくり返し、そっと離れていく。

「かわええ寧々にようやくキスできたわ」

 柔らかく微笑み、とんでもないことを言われた寧々は赤面する。はっきり物を言うので可愛げのない女だと自覚しているのに、伊織はいつだって寧々を「かわええ」と言ってくれるのだ。大好きな恋人からそんな風に甘やかされたら、自分は本当に可愛いのではないかと錯覚してしまう。
 伊織の甘さは毒のように寧々の身体にじわじわと染み込んでいく。

「……もう、伊織さんは私に甘過ぎ」
「彼女を甘やかして何が悪いん?」
「それは……」

 頬を優しい手つきで撫でられて、とろけるような甘い顔でこちらを見つめる伊織から視線を逸らせない。まるで俺を見ていろと言っているような力強い視線に絡め取られ、すっと落ちていく。

「なあんも悪いことなんてあらへんよ。寧々は俺に愛されていればええねん」

 もう一度触れるだけの優しいキスをされる。弾力のある唇に触れられて気持ちいい。もう少し触れていたいと思うのに、いつの間にか身体ごと離れていって車のエンジンをかけた。少しでも寧々に名残惜しさを感じさせた伊織の勝ちだ。またしても寧々は負けてしまった。

「伊織さんは本当にずるい」
「おおきに。もっと俺のことだけ考えてや」

 流し目でちらりとこちらを見る伊織はひどく楽しそうだった。
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