京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜
電話を切り、居留守を使うため部屋中の電気を消して、祈るような気持ちで伊織を待っていたその時だった。ピンポンとチャイムが鳴ったのだ。

「寧々、いるんだろ? 開けてくれよ」

 昔の関係なら、喜んで開けただろう。
 でも、今は赤の他人だ。そんな関係性の人がこんな夜にドアを開けると思っているのだろうか。こんな不躾な人じゃなかったのに、もう少しまともな感性を持っていたはずなのに。そんな拓也はもうどこにもいないのだ。

「寧々、おい、寧々」

 ドアをバンバン叩き、音が鳴り響く。居留守がバレているのかもしれない。
 いつまでも叩かれては近所迷惑になる。寧々は仕方なく開けることにした。もちろん、チェーン越しである。

「……なに?」
「なんだ、やっぱりいるじゃねえか。ここ開けてくれよ、話がしたいんだ」
「無理。今更何の用なの?」
「それを話すから開けてくれよ」

 押し問答が続きこのままでは長引きそうだと思ったので、本当に仕方なく条件付きで家に上げることにした。

「騒いだり手あげたりしたら警察呼ぶからね」
「女相手にそんなことしねえよ」
「どうだか」

 家の奥まで入れたくなかったので、玄関入ってすぐにあるリビングに通した。

「お前の家、変わってないな」

 懐かしむように拓也はそう言う。この家は変わったのだ。それは、拓也に関連するものが全て捨てられたこと。写真だって飾っていたのに、それを忘れたのか何も触れてこなかった。

「で? 話ってなに?」
「……ああ、まずは謝らせてくれ。俺が悪かった」

 拓也はばっと頭を下げた。それくらい当然なので、別段なんとも思わない。
 何も言わない寧々に痺れを切らした拓也は、身の上話をつらつらと話し始めた。
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