京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜
 ここは昨日のバーから二駅離れたところにあるらしく、一度も降りたことのないところだったので、寧々は駅まで送ってもらうことにした。
 エントランスから出ると、建物を見上げて寧々は感嘆した。大きなマンションだったからだ。
 寧々は二階建てのこぢんまりとした築三十年のアパートに住んでいるので、伊織との収入差を感じてしまう。
 駅に向かう道中、寧々は伊織に聞いてみた。

「清水さんはなんの仕事してるの?」
「内緒」
「昨日からそればっかりだね」
「寧々ちゃんともっと親しくなったら教えてあげる」
「それも昨日聞いた」
「それやったら、袖にしないでちゃんと話を聞いてや」
「はいはい」

 伊織は秘密主義なのかと思うほど、自分に関することは教えてくれなかった。そんな人と仲良くなるのは難しいのではないだろうか。

「ツンケンしたところもええね」
「ええ?」
「寧々ちゃんって普段はしっかりしてるやろ? でも、心を開いた相手にはぐっと距離が近くなる」

 寧々の性格を言い当てられて、ぎょっとした。

「なんで知ってるの?」
「それも内緒やで」

 もしかしたら、昨日伊織の前で醜態を見せてしまったのかもしれない。

「……ねえ、昨日の私って」
「えらい可愛らしかった」

 墓穴である。
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