京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜
 会計を任せて寧々は先に店を出た。
 店前から伊織の様子を伺うと、なにやら店員さんと話をしている様子が見えた。

 しかも、よくよく見れば相手はあの美人店員さんではないか。なにを話しているのか気になったが、きっとオムライスがおいしかったですよとかそんな世間話をしているのだと思うことにした。
 しかし、期待は外れてしまった。

 なぜならば、美人店員さんは伊織になにかを渡したからだ。女の勘があれは連絡先を渡しているのだと言っている。

 なんだか見てはいけないものを見てしまった気がして、寧々はくるりと踵をひるがえしてそっと離れた。店から少し離れた場所で待つことにした。
 それから少し経って、伊織は出てきた。

「待たせてごめん、さあ、行こか」

 何事もなかったかのように振る舞う伊織になんだかムカムカしてきた寧々は、つい「あの店員さんからなにかもらったんじゃないの?」と言ってしまった。
 伊織は「見られてたか、ごめん」と言って苦笑を浮かべた。

「誤解しないでほしいから正直に言うわ。確かに連絡先を渡されたよ。でも、ちゃんと断って受け取ってないから安心して?」
「え? どうして……」
「どうしてって、寧々ちゃんとデートしとるのに、ほかの女の子にうつつを抜かすわけないやん」

 思わぬ言葉を聞いて、寧々は固まる。男というのは綺麗な女の人に靡くものだと思っていたからだ。たとえ伊織が寧々のことを「可愛い」と言っても、それは伊織の口がうまいからそう言っているだけだとろくに相手にしていなかった。

 それがそうではないのかもしれないと思い知らされて、寧々は身体がほてっていくのが嫌でも分かってしまった。
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