京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜

気になる彼はどうやら作家らしい

 伊織に連れられてやってきた喫茶店は純喫茶のレトロな雰囲気で、どこか昔懐かしい。
 お昼時ということもありやや混雑していたが、十分ほど待って席に案内された。

 朝はトースト一枚に牛乳一杯だったので、お腹が空いて仕方ない。
 メニュー表は一つしかないため、前回のオムライス店の時と同じように一つのメニューを囲うように二人で見た。相合傘のこともあり、近い距離にドキドキする。それを悟られないように澄まし顔を繕った。

「清水さんはここに何回か来てるの?」
「せやで。俺のおすすめはナポリタンなんよ」
「そうなんだ。じゃあ、それにしようかな」
「ほな、俺もナポリタンで」

 メニューを見ていると、ドリンクコーナーにメロンソーダフロートがあった。レトロな純喫茶のイメージそのもののメニューがあることになんだか感動した寧々は、それを頼むことにした。

「私メロンソーダフロートがいいな」
「お、なかなかいいもん頼むやん。せやなあ、俺はコーラフロートにしよか」
「清水さんもいいもの頼むじゃん」
「おおきに」

 伊織が注文してくれたので、寧々は任せることにした。二人ともドリンクを食前に持ってきてもらい、数分待ったところで注文が届いた。
 メロンソーダフロートにはバニラアイスがついており、さくらんぼがちょこんと乗っている。鮮やかな緑色は見ていて楽しい。
 寧々はさっそくスマホで写真を撮った。
 すると、カメラの向こうでピースをしている伊織が写った。寧々はお茶目な人だなとくすくす笑いながら写真に収めた。

「清水さん、もしかして写真好きなの?」
「そういうんわけないんやけど、何気ない瞬間でも思い出に残しておきたいやん?」

 伊織の言っていることに寧々はいたく同意した。時間というものは有限で、その時は記憶に新しいものだとしても、過ぎてしまえばそれは過去の時間になる。いつまでもその瞬間を残しておくことができる写真が寧々は好きなのだ。
 似たような感性を持っている伊織に親近感が湧き、よりいっそう伊織という人を好きになってしまう。

「アイスが溶けてまうよ、飲もうか」
「そうだね」

 ストローでメロンソーダを吸い込むと、子どもの頃によく飲んだ味がして優しい気持ちになる。
 スプーンでアイスを掬って口にすれば、ほんのりとした甘さが舌を包む。おいしい。

「なんだか懐かしい気分になるね」
「昔懐かしってやつやんな。こういう純喫茶ってなかなかあらへんから、ここはよう通ってるねん」
「そうなんだ」

 珍しく伊織が自分のことを教えてくれた。いつもはのらりくらりとかわすのに、今日は素直な日のようだ。
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