京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜
 そこで、デート一回につき伊織のことを教えてもらうことを思い出し、寧々は「そういえば」と口にした。

「デートしたら清水さんのこと教えてくれるんだよね?」
「そうやで、今日はなにが知りたいん?」

 伊織のことはたくさん知りたいが、やはり前回聞き損ねた仕事について聞いてみよう。

「清水さんの仕事かな」
「ええよ。俺は作家しとるんよ。いわゆる小説家やね」
「ええ! そうなの!?」

 失礼な話だが、華やかな雰囲気のある伊織が作家をしているとは全く考えていなかった。表舞台に立つようなルックスをしているからこそ、そう思ってしまったのもある。

「へえ、意外だなあ」
「そんなに意外なん?」
「うん、モデルとかそういう仕事してるのかと思った」
「それこそありえへんよ。寧々ちゃんも面白い冗談言うんやね」

 くすくす笑う伊織は楽しそうだ。
 今日あじさいを見にきたのも、もしかしたら仕事に活かすためなのかもしれない。そう考えると、ちくちくしていた心は鳴りを潜める。恋とは単純なものである。

「清水さんって作家なんだね。そういえば、昨日私の好きな作家さんの新刊が出たんだよ、明日ゆっくり読むんだ」
「へえ、そうなんや。……ちなみに、誰なん?」
「水川累先生だよ」
「水川累? なんでまた」
「描写が丁寧だし、文章が好きなんだよね。色んなジャンルを書けるのがすごいと思う。水川先生は謎に包まれてるけど、私は好き」
「そうなんや、知らんかったわ」
「言ってなかったからね。あとは、読書も好きかな」

 本談義で盛り上がっていたところで、ナポリタンが届いた。寧々はスマホでさっと写真を撮る。
 すると、先ほどのメロンソーダフロートの時のように、伊織がまたピースをしていた。
 伊織のマイペースな行動に慣れてきた寧々は、フィルター越しににこにこしている彼の写真を撮った。
 寧々も伊織に写真を撮ってもらい、満足する。

「いただきます」
「いただきます。寧々ちゃん、食べてみて」
「うん」

 フォークでくるくる巻いて口の中に入れる。玉ねぎの甘みとピーマンの苦味がアクセントになり、パスタに染み込んでいる。昔ながらの味わいに寧々はどこか懐かしさを感じた。

「おいしいね」

 寧々が味わいながらにっこり微笑むと、伊織も嬉しそうに笑ってくれた。

「せやろ、俺はここのナポリタンが好きやねん。寧々ちゃんにも食べて欲しかったから、今日は来れてよかった」

 伊織もナポリタンを食べ進める。
 寧々は伊織がおすすめのものを教えてくれたことが嬉しくて、ナポリタンに舌鼓を打ちながら幸福感でいっぱいだった。
 自分のことを話すのにデートを持ちかける男が、好きなお店に連れて行ってくれたのだから。
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