京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜
「清水さんは関西の人だよね? どうして東京に来たの?」
「そんなん決まってるわ、寧々ちゃんに会うためや」
「ええ? なにそれ」

 口説き文句を言われているのだと気づき、寧々はなんだか面白くなった。
 そもそもここに来たのだって、振られた腹いせで立ち寄っただけであって、それ以上の考えはない。

 以前ならこういう場は恋人だった拓也がいたから誘われても乗らなかった。
 でも、それも今日でおしまいである。若くて綺麗で浮気女を妊娠させたからというクソみたいな理由で振られた寧々は、目頭がツンとしてきた。

「寧々ちゃん、どうしたん? どっか痛い?」
「ううん、違うの」

 寧々は首を振ることしかできない。今にも泣きそうな寧々を見て、伊織はそっとハンカチを差し出した。

「ほら、これ使ってええから。可愛い子ぉに涙は似合わんよ」
「なにそれ」

 今のは寧々を宥めるための冗談だということが分かっている。
 それでも、沈んだ心は優しさに触れて今にも溢れそうだ。
 それは、涙となって寧々の気持ちはあふれ出る。

「よしよし、つらいことは忘れて今日は飲もか」
「……うん」

 それからというもの、伊織は軽快にトークをするものだからその話術に引っ張られた寧々はくすくすと笑みを浮かべた。
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