京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜
「なあ、連絡先教えてくれへん?」
「いいよ」
「寧々ちゃん、今フリー?」
「フリーになったところ」
「へえ、そうなんや」
「清水さんは?」
「内緒」
「うわ、いけず」

 深くは聞いてこないのが今の寧々にはありがたかった。
 メッセージアプリの連絡先を交換し、寧々は試しにスタンプを送ってみた。
 すぐに既読がついて、同じくスタンプが送られてくる。その何気ないやり取りがなんだか心地よくて、寧々は自然と笑みを浮かべることができたのだった。

 それからというもの、伊織と話が合った寧々は酒が入っているせいかいつもより気分がよかった。それこそ、大好きな恋人に振られたことも忘れたまま。ある意味幸せな時間が寧々を包んだ。

「なあ、寧々ちゃんはなんでフリーになったん?」
「ええ? それ聞く?」
「寧々ちゃんのこと知りたいから、じゃあかん?」
「ずるい人」
「おおきに」
「褒めてないから」

 寧々はグラスを口元に持っていくが、飲む気になれない。せっかく憎たらしい男のことを忘れていられたのに。
 そもそもここに来たのだって、大好きな男にぽっと出の女が現れたことで振られてしまったのがやるせなくて、わざわざ足を運んだのだ。
 それを今日出会ったばかりの伊織に話していいものなのだろうかと悩む。

「話したくないことなん?」
「んー……。ちょっと、ね」

 含みを持たせて答えた寧々に思うところがあったのだろう。さすがにそれ以上深く追求することはなかった。
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