京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜
「寧々ちゃん、たこ焼き食べへん?」

 伊織の指差す先には鉄板で焼かれたたこ焼きのいいにおいがした。たこ焼きは人気のようで人が並んでいるが、食欲を刺激されるこのにおいに抗えるわけがない。

「いいにおいだね、食べたい」
「ほな、並ぼうか」
「うん」

 いつの間にか日が落ちており、赤く染まっていた夕焼けは黒の世界に包まれた。屋台や明かりで灯される夜の世界は眩しくて、それだけで熱に浮かされそうになる。
 ぼうっとしていても伊織と繋がれている手のおかげで棒立ちにならずに済んだ。

 寧々達の番になり、伊織がそれぞれ食べられるように、二パック購入した。つまようじでぶすりと刺し、そっと掬うと湯気が立っておりかつお節が踊っている。
 ふうふうと息をかけて冷まし、少しかじるとだしの香りが鼻を抜ける。中はとろとろでとても熱いが、その熱さ込みでおいしい。
 伊織を見ると、あつあつのたこ焼きを食べ慣れているのか、寧々ほど熱がってはいなかった。さすが関西出身である。

「清水さん、このたこ焼きおいしいね」
「うん、悪くないな。うまいわ」
「やっぱり清水さんもたこ焼き好きなの?」
「こっちの人と比べたら食べる機会は多いと思うで。今度ごちそうしよか?」
「いいの!? 食べたい!」
「ふふ、いつでもおいで」

 八個入りのたこ焼きを、熱いおいしいと言いながら二人で食べ進める。伊織は先に食べ終わり、寧々が熱さと格闘しているところを見て楽しんでいるようだった。
 寧々もなんとか食べ終わり、二人分の空の器をゴミ箱に捨てた。
< 73 / 143 >

この作品をシェア

pagetop