京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜

一歩近づいて半歩下がる

 夏祭りは本当に楽しかった。
 二人の思い出であるあじさいの花の意図にもきづいてもらえたことが、けっこう嬉しかった。その後にとんでもないくらい恥ずかしいことを言われたが、それはまあ伊織にやり返されたのだと思うことにしておく。

 伊織と手を繋いでたくさんの屋台を見て回ったし、ぶどうあめやたこ焼き、イカ焼きにベビーカステラ、その他もろもろと食べ歩きもできた。
 伊織はというと、あんなにやりたがっていた金魚すくいが下手だったことに寧々はギャップでかわいいと思ったのだ。

 距離もぐっと近づいて心も伊織のそばにいられたはずなのに、どうしてか"好き"だけは言えなかった。ただの友達では出せない男女の雰囲気になっていたのに、どうしても寧々は一歩踏み出せなかった。

 それに対して後悔はしていないし、あの時無理に距離を詰めようとしても、伊織ならきっとさりげなくかわされてしまっていただろうから。

 それから一週間、寧々はがむしゃらに働いた。何かしていなければ、夏祭りのことを思い出してしまうからだ。
 とりとめのないメッセージを何回かくり返していたが、これといって何か進展したりすることもなかった。
 それも相まって、なんだか臆病になっている気がする。

 休日にちゃんと休みがもらえるよう、無理をしすぎたせいなのかもしれないし、先日のことを考えすぎて頭が疲れたせいもあるのかもしれない。

 カーテンから太陽の日差しが差し込み、ゆっくり起きた寧々は身体の怠さに気づいた。のども痛いし嫌な予感が頭を掠める。クーラーが効きすぎたのかもしれないと思ったが、一応熱を測ったらなんと三十七度五分の熱があったのだ。
 測りミスがあったのかもしれないともう一度測り直すが、結果は同じ。どうしたものかと考えるが、ここ最近しっかりと休養を取れていなかったことが原因だと思うので今日明日はゆっくり休もう。
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