総長の愛が、重すぎる
乾いた音が響き、拓真の頬が鋭くはじける。周囲が一斉にざわついた。

「蓮っ」

ひまりが声を上げる。

しかし拓真もすぐに口元の血をぬぐい、笑みを深くした。

「やっぱりそう来るか」

そのまま蓮の胸ぐらをつかみ返し、額がぶつかりそうな距離でにらみ合う。

「女一人でそこまで熱くなるとか、余裕なさすぎだろ」

「てめえに触られるくらいなら、余裕なんかいらねぇ」

押し返した瞬間、拓真の仲間が動いた。

それに合わせて悠真たちも前に出る。

一気に場が乱れる。

「ひまり、下がって」

湊に腕を引かれ、ひまりは数歩後ろへ下がった。それでも目の前で始まった乱闘から目をそらせない。

臣が一人を蹴りで止め、悠真が別の一人の腕をねじり上げる。律はひまりの前に立ちながらも、近づいた相手だけを正確に払いのけていた。

その中心で、蓮と拓真は真正面からぶつかっていた。

拳がぶつかるたび、鈍い音が響く。

どちらも一歩も引かない。

蓮の頬が切れ、拓真の唇が裂ける。それでも二人の目は死んでいなかった。

「蓮、やめて……」

ひまりの声は震えていた。

怖い。

誰かが傷つくのが怖い。

自分のせいでこんなことになるのが、たまらなく苦しかった。

そのとき、拓真の視線が一瞬だけひまりに向いた。
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