総長の愛が、重すぎる
ひまりはその背中を見送りながら、胸の奥に重たいものが残るのを感じた。

すると、隣の蓮が深く息を吐く。

「……無理だった」

「え」

「平気なふり」

ひまりが顔を上げると、蓮はひどく苦しそうな顔をしていた。

「悠真がおまえ好きだって言ってるの聞いて、頭ん中ぐちゃぐちゃになった」

そのままひまりの両肩に手を置く。

「おまえがちゃんと俺を選んでくれたのに、それでもまだ不安になる」

ひまりの心臓が痛いほど鳴る。

「蓮」

「だって、あいつはやさしいし、明るいし、おまえを笑わせられる」

そんなふうに自分以外を認める蓮は珍しくて、ひまりは思わず目を見開いた。

蓮は苦しそうに笑う。

「俺は重いし、怖いし、すぐ嫉妬する」

「うん」

「うんって言うな」

思わず笑ってしまうと、蓮が少しだけむっとする。

その顔がかわいくて、でも切なくて、ひまりはそっと蓮の制服をつかんだ。

「でも、私は蓮がいい」

その瞬間、蓮の目が揺れる。

「重くても?」

「うん」

「嫉妬しても?」

「うん」

「……キスしたくなっても?」

ひまりは一気に真っ赤になる。

「そ、それは今聞くの?」

「聞いてる」

真剣な顔なのがずるい。

ひまりは周りをきょろきょろ見て、小さな声で言った。

「人いないなら……」

最後まで言い切る前に、蓮の腕がひまりを引き寄せた。

中庭の奥、木々の影になる場所へ連れていかれる。

「れんっ」

「誰も見てない」

低い声が近い。

ひまりの背中をそっと木にもたれさせると、蓮は逃がさないみたいに目の前に立った。

「もう一回言って」

「え」

「俺がいいって」

ひまりは恥ずかしさでいっぱいになりながらも、ちゃんと蓮を見る。

「……蓮がいい」

次の瞬間、蓮の唇が重なった。

少し強引なくらいまっすぐなキスだった。

でも痛くはなくて、ただ蓮の不安も嫉妬も全部溶かすみたいに熱かった。

一度離れても、すぐまた触れる。

短く、何度も確かめるようなキス。

「ん……」

ひまりの声がこぼれると、蓮の手が頬を包んだ。

「好き」

キスの合間に落ちるそのひと言が、胸に刺さる。

「俺だけ見て」

甘いのに、少し苦しそうで、切ない。

ひまりはこくんとうなずく。

すると蓮はようやく少しだけ安心したみたいに息をついた。

額を合わせたまま、目を閉じる。

「……ほんと、余裕なくなる」

ひまりはそっと蓮の胸に手を置く。

速い鼓動が伝わってくる。

「私も」

そのひと言に、蓮が目を開けた。

「今、反則」

「なんで」

「可愛すぎる」

またそんなことを言う。

でも今は、ひまりも少しだけわかっていた。

好きって、こういうふうに苦しくて、甘くて、独り占めしたくなるものなのだと。

蓮は最後にもう一度だけ、やさしくひまりの額にキスを落とした。

「放課後、迎えに行く」

「うん」

「今日はずっと一緒にいたい」

「……うん」

今度は素直に答えられた。

その返事を聞いた蓮は、少しだけ満足そうに笑って、ひまりの手を取る。

さっきまでの苦しい空気が、ようやくやわらいでいく。

それでもひまりは知っていた。

蓮の嫉妬は、きっとこれからもなくならない。

でもそのたびに、自分の言葉で安心させたいと思った。

この人がくれる重たいくらいの愛を、ちゃんと受け止めたいと思ったから。
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