孤高の大富豪は優しい魔女に恋をする
シアは少し遠い目をして哀しげな光をその瞳に宿して、懐かしそうに言った。

「ビューテイと、あっ私の飼っていた馬の名前ですが、牧場の小さな柵や飼い葉桶等を並べてそれらを跳んで遊んでいたんですよ」

「ビューテイっていうのか?美人の馬って感じだな。そのままだけど」

「ええ、仔馬の時から育てたんですが本当にきれいな顔をした優しい雌馬だったんです。今はもう五歳になるはずです」

「ロンバスと同い年だな。ロンバスは雄だから大きいけど、雌ならほっそりしていただろう?」

「はい、とても肢体の美しい自慢の馬でした」

そう言ってシアは堪えきれずにポロリと涙を一筋こぼした。

「何か深い訳があるんだな。思い出させてしまって申し訳なかった」

そう言ってシアの涙を優しく指で拭ってくれた。

シアはビクッと身を震わせた。突然の事に驚いたのだ。

お陰で涙はすぐに引っ込んだが、男性に頬を拭われるという初めての体験に動揺してしまったシアだった。

「店の準備があるだろうから長居は無用だな。これだけ頂いて行きたいから会計をしてくれるか?親友が最近不眠症気味だと言っていたからこのキャンドル買っていってやろうと思って…それにこのなんにでも効く塗り薬って例えばどんな?」

シアは我に返って

「は、はい。ちょっとした擦り傷や虫刺されやおできにあせもなんでもOKですよ」

「それはすごいな」

「沢山お買い上げいただきましてありがとうございます。それに乗馬クラブはキチンと入会金も取って下さいね」

「男に二言はないよ。チケットだけ買ってくれればいいからな。シアと外乗にいけるのを楽しみに待ってるよ」

「はい、ではお言葉に甘えます。ぜひ湖までのトレッキングに連れて行って下さい。私も楽しみにしています」

「うん、頑張って」

ダルは荷物を胸の前に抱えてロンバスに乗って帰っていった。
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