夫が出戻りの幼馴染と「焼け木杭に火がついた」と浮気していたので、そのまま燃やしてしまってもいいですよね?
 とはいっても、普通の人からしたらそんなことなど分からないだろう。
 夫もそう。
 
 厳格(げんかく)な父の元、私たちは政略結婚をした仲なのだ。
 父は元より貴族令嬢が「魔法を使う」ということを認めず、私が火を操れると知っているのはごくわずか。
 
 夫も私のことは普通の貴族令嬢だと思っているし、そう見えるように振舞(ふるま)っている。
 父が決めた結婚だからということもあるけれど、貴族令嬢なんていうものはそんなものだと教え込まれてきたから。

 全ては家のため。
 女の幸せとは、いい身分の人の元へ嫁ぎ、子孫を残すこと。
 古臭いといえばそうだけれど、それが領地や領民を持つ者の義務らしい。

 父はまぁ、子どもからしたら何とも言えない性格の人だが、父が選んだ相手にしては夫はどこまでも良かったと言えよう。

 優しくまじめで、気遣いの出来る夫。
 だた一つの欠点を除けば、何も申し分はない。

「夫婦なんだから一緒に寝れば温かいから、何も新調などすることはないじゃないの」

 一番上座に座る夫にあまり似ていない義母が、やや私を睨むように言葉を放つ。

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