雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
5.万能令嬢、里帰りする
5-1
数日後、リリアナ・ロングレインが青嵐宮にやって来た。
淡い桃色のドレスに身を包み、柔らかなピンクブロンドの髪を美しく結い上げている。年齢はエノレアと同じか少し下くらいだろうか。
白い肌に大きな水色の瞳。口元には品のよい笑みが浮かんでいた。
誰が見ても、可愛らしく庇護欲をそそる令嬢だ。
「リリアナ・ロングレインです。本日より青嵐宮にてお仕えできますこと、光栄に存じます」
青嵐宮の職員たちの前で、リリアナは優雅なカーテシーを披露する。それを眺める男性文官たちからは、ほうっとため息が漏れた。
「堅苦しい挨拶は必要ない」
レニオスは全く感情のこもらない表情で応じると、青嵐宮の職員たちのほうを見る。
「本日より、彼女を俺の専属侍女として受け入れる。皆、承知しておくように」
「はい!」
その場にいる職員一同が、一斉に返事をした。
少し離れた場所に控えていたエノレアは、その様子をぼんやりと眺める。
(可愛らしいお方だわ)
レニオスと並んでも見劣りせず、身分も年齢も釣り合っている。
もし二人が結婚すれば、誰もが祝福するのだろう。
そう考えると、また胸がざわついた。
「エノレア」
突然レニオスに呼ばれ、エノレアはハッとする。ぼんやりしていたことに気づかれてしまっただろうか。
「は、はい!」
「こちらへ来い」
言われるがままに、エノレアはレニオスのそばへ歩み寄った。
「彼女はエノレア。青嵐宮で唯一の、女性の第一級文官だ。もし、男性文官に言いにくいことがあった際は、彼女を頼ってくれ」
リリアナはエノレアを見つめる。