雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

5-4

  ◇ ◇ ◇


 執務室に紅茶の香りが漂う。

「エノレアとオリバーも飲むか?」

 声をかけてくれたのは、先輩文官だ。

「ありがとうございます。いただきます」

 オリバーはぱあっと表情を明るくする。

「エノレアは?」
「すみません。私はやめておきます」

 申し訳なさそうに言うエノレアを見て、先輩は眉尻を下げる。

「そっか。この前の事件、紅茶だったもんね。じゃあ、エノレアには白湯を用意するよ」
「ありがとうございます」
「どういたしまして。その分働いてもらうから」

 先輩はけらけらと笑うと、パチッとウインクした。
 底抜けに明るいその態度に、気持ちが救われる気がした。

(私、どうしたんだろう)
 
 あの事件のあとから、明らかにおかしい。まず、妙な悪夢を見て夜よく眠れなくなった。
 夢の中のエノレアは、今よりずっと小さな姿をしていた。そして、まるで貴族令嬢のように可愛らしい恰好をしてどこかのガーデンパーティーに参加しているのだ。
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