雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
(それって、クビってこと?)
青嵐宮は、仕事のできない文官には厳しい職場だ。主であるレニオスは、使えないと判断すると、クビを斬ることにためらいがない。
「そんなっ! 大丈夫です。私、働けます。働かせてください!」
エノレアは必死に訴える。
まだ青嵐宮に入って一年も経っていない。こんなふうに里帰りしたら、ガレスをどんなにがっかりさせてしまうだろう。
その必死さが伝わったのか、レニオスは目を細める。
「エノレア。勘違いするな。俺は、お前のことを高く評価している」
「じゃあ、なんで……」
「お前は今、自分の状態が最高のパフォーマンスを出せる状態だと思っているのか?」
「それは──」
エノレアは言葉を詰まらせる。
自分が本調子でないことは、自分自身が一番よくわかっていた。
「万全に働けない人間は、足手まといだ」
冷たい言葉が、胸に突き刺さる。
エノレアは唇を引き結び、俯く。だが、続いた言葉に驚いて顔を上げた。
「だから万全になるまで休めと言っている。お前を切り捨てると言っているわけではない」
エノレアを見つめる金色の瞳に、責める色はない。
「まずは一ケ月だ。調子が戻らなければ、さらに延長する」
「殿下……」
「戻ってきたら、今以上に成果を上げることを期待している」