雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!


 王都から遠く離れた村はずれの森の中。
 ガレスは、自宅裏で薪割りをしていた。ぎっくり腰で使いものにならなかった腰はすっかり回復した。

 ピーッと鳥の鳴き声がして顔を上げると、見覚えのある鳥の使い魔がいた。

「珍しいな。フォレストからの依頼か」

 鳥は迷うことなく、ガレスの元に舞い降りる。鳥の付けているペンダントトップに魔力をかざすと、ヴィーンと音がして空中に暗号文字が浮かび上がった。

 内容は、王都にある青嵐宮からの依頼で、主であるレニオスを暗殺しようとしている黒幕を暴いてほしいというものだった。

「青嵐宮? それって確かエノレアの──」

 そのとき、ガレスはハッとする。遠方二百メートル程度先に、人の気配を感じたのだ。
 目の前の使い魔が一瞬で姿を消す。

 家の正面に回ると、通りを中年の配達員が近づいてくるのが見えた。

「こんにちは、グレイさん。郵便ですよ」

 配達員はガレスを見つけると、手紙を持った片手を振る。

 ガレスは彼のほうに近づき、手紙を受け取った。

(随分と上質な封筒だな)

 差出人を見ると、青嵐宮の印が押されている。

「青嵐宮? エノレアか?」

 だが、普段エノレアが手紙を送ってくる際はもっと安物の便箋だ。不思議に思いつつも、ガレスは家に戻って封を切った。

「これは……? エノレア経由で鹿のXXを送ってきた奴じゃねーか」
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