雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 手紙の差出人は、思いもよらない人物──青嵐宮の主、レニオス・アッシュフォードだった。
 ちなみに、鹿のXXは手つかずのまま棚の上に置いてある。見た目が完全に鹿のXXなので、どうにも食べる気になれず、かといって大事な娘がくれた物を捨てるわけにもいかず、そのままになっているのだ。

「いったい何の用だ? 鹿のXXの感想を求めてきたんじゃねーだろうな」

 ガレスはレニオスからの手紙を読み始める。
 そこには、エノレアが青嵐宮で起きた毒物事件で精神的ショックを受けているため、しばらく自宅で療養させてほしいという旨が書かれていた。
 そして、エノレアは多少無理をするところがあるのでしっかり休むように見守ってやってほしいことや、彼女は青嵐宮にとってかけがえのない人材であり、万全の状態で戻ってくるのを待っているとも書かれていた。

「エノレアが精神的ショックを?」

 手紙を読み終えたガレスは腕を組む。

 エノレアは、明るくて快活な娘だ。
 大人になったときに誰からも踏みにじられないようにと色々なことを教え込む過程で少々手荒な修行もあったが、一切弱音を吐かずにガレスの特訓に付いてくるような、根性のある子供だった。

 そんなエノレアが長期療養を必要とするほどショックを受けているというのが、引っ掛かる。 
 
「そういえば、あいつを拾ったとき──」

 遠い記憶が蘇る。雪山で倒れているエノレアを助けたとき、エノレアは『毒なんて入れていない』とうわごとのように言っていた。

「毒混入の場に居合わせて、昔のトラウマが蘇ったか?」
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