雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「なんだ、お前。泣いてんのか? 大人になったと思ってたのに、まだまだガキだな」
「ガキじゃないわ! もうちゃんと働いているもの」
「はいはい。俺にとってはいくつになってもガキなんだよ」
ガレスは笑いながら、エノレアの頭をガシガシと撫でる。
「おかえり、エノレア」
その一言を聞いた瞬間、胸に熱いものが込み上がる。
「うん、ただいま。ただいま、お父さん」
エノレアは噛みしめるようにそういうと、もう一度ガレスに抱きついた。
「とりあえず入れ。積もる話もあるだろ」
ガレスに促され、エノレアは家に入る。
夕食は、ガレスが作った猪汁だった。
「猪肉、久しぶりだわ」
「エノレアは猪肉が好きだもんな」
ガレスは豪快に笑う。味は相変わらず塩味だが、この味付けが懐かしくてとても美味しく感じた。
「……お父さん、なんで私が帰って来たか聞かないの?」
食事も中盤に差し掛かったころ、エノレアは恐る恐る尋ねる。
ガレスはエノレアが帰ってきてから、一度も理由を聞かない。それどころか、エノレアが帰ってくることを最初から知っているかのような態度だった。
「エノレアが言い出すまで待っている」
「そっか」
エノレアは猪汁を一口すする。
相変わらず、ガレスはぶっきらぼうだけど優しい。