雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「これ」
エノレアへ差し出されたのは、白い封筒だった。
上質な封筒には、見覚えがある。
「これ、青嵐宮で使っている封筒?」
「ああ。お前が帰ってくる前日に届いた」
裏返すと、青嵐宮の紋章が押されていた。
「まさか……解雇通知?」
青嵐宮からここに届く手紙なんて、思い当たるのはそれくらいしかない。
ゆっくり休んで復帰するように言われたが、やっぱり解雇することにしたのだろうか。
「第三王子から直々の手紙だ。読むか?」
「レニオス殿下から?」
エノレアは恐る恐る封筒から中身を取り出す。
もう二度と青嵐宮には来なくていい。そう書いてあるかもしれないと思うと、とても怖い。
そこには、整った筆跡で文章が綴られていた。
──エノレアは本人こそ問題ないと言い張るだろうが、しばらくは何もさせず、ゆっくり休ませてやってほしい。
──仕事を持ち帰ってやろうとする可能性があるので、注意してほしい。
──青嵐宮にとって欠かせない人材なので、万全の状態で戻ってくることを願っている。
書いてあるのは、全てエノレアのことを心配している内容だった。
「仕事を持ち帰ってやろうとする可能性がある……」
実は、カバンの中には仕事の書類がぎっしり入っている。少しでも役に立ちたいと、納期がまだずっと先のものだけを選んで、持ち帰ったのだ。
ガレスは呆れたような顔をする。