雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「お父さん? どうしたの?」
「いや、なんでもねえ。いい上司に恵まれて何よりだ」
「うん」
「エノレア。一つだけ、はっきりと伝えておく」
「何?」
「俺より強い男じゃなきゃ、嫁には出さん!」
ガレスが強い調子で宣言する。
「え?」
エノレアは呆気に取られて、ガレスを見つめた。
「お父さん、急になんの話?」
「とにかく、覚えておけ。俺より強い男じゃなきゃ、嫁には出さんからな!」
「うん。わかった」
どうしてそんな話になったのか理解できないが、エノレアはとりあえず頷く。
「よし。わかったなら、いい。猪汁、もっと食べないか?」
「もらおうかな」
エノレアは微笑む。
こうして自分を大切にして、心配して、いつだって受け入れてくれる場所がある。
そのことが、とてもありがたかった。