雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
使い魔の上の画面が消え、バサバサと飛び去って行く。
「久しぶりの活動だな。さて、どうやって攻めていこうか」
ガレスは首をこきっと鳴らした。
エノレアは翌日から、ガレスの仕事の手伝いを始めた。
休養しろと言われたものの、何もしないのも性に合わず、体を動かしていたほうが落ち着くのだ。
切り倒した木の幹を頭上に投げ、剣を引き抜くとさいの目状に斬る。エノレアの周囲に、薪の形に斬られた木がドスンドスンと落ちた。
「やるな。王都に行っても腕は落ちてなさそうだな。訓練でもしてたのか?」
「えへへっ。お父さんが言う通り、王都には引ったくり犯がよく現れるから、そのたびに退治しているわ」
「そりゃ、頼もしいな」
ガレスは笑う。
ふわっと風が吹き、肌をなでる。久しぶりに汗をかいたので、そよ風が心地よかった。
切り株に座り休憩していたエノレアは、ふと足元に小さな花が咲いていることに気付く。
「そういえば、お父さん。相談したいことがあるの」
「なんだ?」
「以前、毒物混入事件のあとから奇妙な夢を見るって言ったでしょう? その夢で、私がよく歌っていた歌があるの」
エノレアは、その場で歌を歌って聞かせる。
「この歌の歌詞、暗号なんじゃないかと思って」
「確かにそんな気がするな。月のしずく……月光を浴びた朝露ってことか?」
「そうかもしれないし、月光花の蜜のことかも。そのほかの部分も、色々と解釈できるわ」