雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
エノレアは瞬きをした。
もっといい仕事。
そんなものがあるのだろうか。
この辺りは、ほとんどが農家か猟師だ。エノレアの卒業した学校の同級生達も実家の手伝いをしている人がほとんどだ。
「じゃあ、農家になれってこと?」
「違う。もっとお前の才能を活かせる仕事だ」
「例えば?」
「王都の文官」
「……文官?」
思ってもみなかった職業を言われ、エノレアは呆けた顔をする。
「ああ、お前なら受かる。第一級を受けろ。俺が受かると保証する」
ガレスは当然のように言った。
ちなみに、文官には第一級から第四級まであり、第一級は一番難しい幹部候補試験だ。受験生のほとんどは幼い頃からその試験を目指して英才教育を受けてきた秀才達だ。
「いや、お父さんに保証されても……。だって私、ただの木こりの娘よ? 高等学院も出てないし」
「俺も木こりだ」
「うん」
「だから問題ねえ」
何が問題ないのか、意味不明だ。
「お父さん、さっきから意味わかんないんだけど。高度な暗号ゲーム? 暗号は得意なのに、全然わからないわ」
「違う。エラ。こう見えても俺はかつて、一年だけ有能な第一級文官として働いていたんだ。そのとき見たから分かってる。どいつもこいつもエラに比べたら芋みたいなもんだから安心しろ」
「さっきは世界中から引っ張りだこって言ってたのに、今度は文官なの? この前は騎士って言ってたよね?」
「とにかく、大丈夫だ。安心しろ」