雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「人の物を盗んではいけません! もうしないって誓える?」
「くそっ……! 誰が──」
「誓えますか?」
エノレアは首を絞める腕に力を籠める。
「……た、助けて。誓う! 誓う!」
「ならよろしい。二度とやらないように!」
エノレアは自分の下にいる男に向かって喝を入れた。
こんなこと、村の学校では一年生で教えられる。
「お嬢さん! 大丈夫ですか!」
そうこうするうちに、先ほどの兵士が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「大丈夫です。この人は無事に悔い改めました。ただ、その場逃れの言葉かもしれないので逃げられないように足の関節を外しておきました。あとはお願いします」
「え?」
兵士は呆気にとられた顔をする。
エノレアはさっと立ち上がると、パンパンとスカートの埃を払った。
時計を見ると、試験開始まであと三十分だ。
「あら、大変。では、私は予定があるのでこれで」
エノレアは朗らかにそう言い残すと、颯爽とその場を立ち去ったのだった。