雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
(うん? 話が通じないけど……つまり、部屋から出ちゃだめってことかしら?)
試験官の様子を見ると、どうやらそのようだとエノレアは判断する。
「じゃあ、ここにいます」
「はい。残りも頑張ってください」
残りも何も、全部解き終わっている。
(暇だわ……)
ただ座って一時間半も待てなんて、暇すぎる。
暇を持て余したエノレアは、解答用紙の端っこに落書きを始めたのだった。
◇ ◇ ◇
ここは王宮内、青嵐宮の一室。
机に向かって仕事をしていたレニオス・アッシュフォードは、ドアをノックする音で顔を上げた。
入ってきたのは、レニオスの一番の側近であるエドガー・レイルズだった。
エドガーはレイルズ侯爵家の嫡男で、第一級文官試験を首席で突破した秀才だ。少し長めの髪を後ろでひとつにまとめた美男なのだが、ここ最近寝不足なのか目の下に薄っすらとクマができている。
「殿下。今年の第一級文官試験の結果が出たようです。正式な合格発表は来週の予定です」
エドガーはレニオスに書類を差し出す。
レニオスはそれを受け取った。