雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
人が多すぎる。なにせ数百人の受験生が、十数名の合格者が書かれたたった一枚の紙を見ようと群がっているのだから。
ようやくエノレアが合格発表を自分で確認できたのは、十分近く経ってからだった。
「あった」
合格者の名前が書かれた紙の一番上に自分の名前を見つけてエノレアは、表情を明るくする。
(お父さんがお前なら絶対受かるって言ってたけど、本当に受かったわ。さすがお父さん!)
最初に第一級文官試験を受けろと言われたときは何を言っているのかと思ったが、またしてもガレスの言う通りだった。ものは試しで受けてみるものだとエノレアは感心する。
「合格者の方は合格通知と今後の案内の書類を受け取りに来てください!」
文官が叫んでいるのを聞いて、エノレアはそれを受け取りに向かう。
指定された場所には、二十代半ばと思しき男性の文官がいた。
エノレアは男性から封筒を受け取ると、中身を確認する。
「配属先は、青嵐宮?」
王都に来る前にガレスに教えられた情報によると、リーヴの王宮には複数の宮殿があり、それぞれが色にちなんだ名前が付けられている。例えば白雪宮、黄玉宮、赤炎宮といった具合だ。
(青嵐宮って、第三王子殿下だっけ?)
エノレアはガレスから渡された特製ノートを開く。青嵐宮のところを見ると『第三王子、レニオス・アッシュフォード。青みがかった黒髪、碧眼。顔は綺麗だが頭の回転が速くて可愛げがない。キュウリが嫌い、かぼちゃが好き。寝るときに布団を抱きしめる癖あり。三歳のときのお気に入りのおもちゃは馬のぬいぐるみ』というよくわからない豆知識が書いてあった。
いったいこんな情報をどうやって仕入れたのかは謎だ。