雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

「きゅうり、美味しいのに……」

 エノレアは呟く。
 ガレスとエノレアは共に料理が苦手なので、きゅうりのような調理なしでそのまま食べられる食材はとてもありがたいのだ。

「あれ。きみも青嵐宮? 僕も。ついてないよね」

 エノレアの持っていた合格通知を見た別の合格者が声をかけてきた。

「僕はオリバー・ハミルトン。よろしく」
「私はエノレア・グレイです。よろしくお願いします」

 エノレアはぺこりとお辞儀をする。
 癖のある茶髪に琥珀色の髪をした、優し気な男性だった。男性にしては色白な肌にはそばかすが散っている。

「ところで、ついてないって?」
「レニオス殿下は厳しいから、どんどん辞めていくって評判だろ」
「そうなの?」

 エノレアは首を傾げる。ガレスの豆知識にはそれは書いていなかった。

「あーあ。家計を切り詰めてロイヤルアカデミーを出させてもらったのに、すぐに文官を辞めたら親に顔向けできないよ。頑張らないと」

 オリバーは息を吐く。

「ロイヤルアカデミーを出ているんですか。すごいですね」

 エノレアは尊敬のまなざしを向ける。ロイヤルアカデミーと言えば、リーヴの最高学府だ。村立学校に通っていたときに、親戚の友人のそのまた友人の親戚が通っていると自慢している同級生がいた。
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