雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「うん、そうみたいだね」
エノレアは頷く。
「腹が減ってたのか?」
そう聞いてきたのはレニオスだ。
「あ、ご理解いただけました?」
エノレアはパッと表情を明るくする。
エノレアが描いたのは、一見すると一般的な薬草のイラストと説明書きだ。しかし、描かれたイラストの名前を説明書きに従い並べ替えてひと工夫すると「お腹が空いた」というメッセージが隠れている。
「即興で作ったにしては上手くできていたと思うんです」
「履歴書によると、お前は村立学校しか出ていない。暗号作成と解読は誰に教わった?」
「父です」
「学者か?」
「木こりです」
レニオスは僅かに眉間にしわを寄せる。
「……木こり。では、古代語は?」
「それも父に教わりました」
「薬草の知識は?」
「父です」
レニオスの眉間の皴が深くなる。彼は、額に手を当てた。
「お前の父は何者だ?」
「え? 普通の木こりですけど?」
エノレアはきょとんとした様子で答える。
(絶対にそんなわけないだろう)
エノレア以外の三人が同じことを思う。
執務室に微妙な空気が流れた。