雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
  ◇ ◇ ◇

 エノレアとオリバーが去ったあと、レニオスは改めて本日より配属されたふたりの経歴書を眺めた。

「エドガー。さっきのふたり、どう思った?」
「オリバー・ハミルトンは例年の新人によく似ていると感じました。やる気に溢れているけれど、どこか瞳に不安そうな表情が見えます。きっと、殿下が厳しいという前評判を聞いて心配しているのでしょう」
「エノレア・グレイは?」
「そうですね……美人ではあるものの、かなり変わった子だと思いました」
「美人だと思ったのか。エドガーが美人と認めるとは珍しいな」

 エドガーはレインズ侯爵家の嫡男であり、ロイヤルアカデミーを首席で卒業、まだ二十七歳の若さでありながら青嵐宮の文官のトップにいる。さらに、見た目も悪くない。

 独身の頃はとてももてて、社交パーティーに出れば彼を巡って令嬢が喧嘩するほどだった。そんなこともあり、エドガーの美人判定基準はなかなかのものなのだ。
 ちなみにエドガーは現在新婚で、妻である元伯爵令嬢は可憐な花として社交界の男性を魅了した美人だ。

「確かに美人であるな」

 レニオスはふっと笑う。

 艶やかな金髪に、青い瞳。色白でしなやかな体つき。ぱっちりとした目元に高すぎない鼻。程よく丸みを帯びたフェイスライン。エノレア・グレイを見れば十人中十人が「美人」と感じるだろう。

「だが、美しいことだけが取り柄の女ならほかにもいる。俺が必要としているのは、仕事ができる部下だ」
「わかっております。ただ、今日あの会話だけでは試験で不正をしたかどうかは判断できません」
「ああ。だが、恐らく不正はしていない」
< 45 / 102 >

この作品をシェア

pagetop