雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「調査に当たって、何を参照したかは記録していますか?」

 エドガーに質問される。

「はい。最終ページに、全ての参考文献を記載しています」
「この本は、A国の言葉で書かれているはずだが?」

 今度はレニオスに聞き返された。

「はい、読みました」
「読んだ? A国の文字を?」
「そうですが? あの……何か問題が?」

 どうしてそんなことを聞くのかわからないと言いたげな目で、エノレアはレニオスを見返す。

「……何も問題はない」

 レニオスは黙り込む。しかし、内心は納得していなかった。
 A国の言語はリーヴ語とは全く違う。きちんと教育を受けなければ、読めないはずだ。

 やや微妙な空気が流れたそのとき、エドガーがポンと手を叩いた。

「とにかく、資料は確かに受け取りました。たった二週間でここまで調べ上げるとは、大したものです」
「おほめ頂きありがとうございます」

 エノレアは褒められてホッとする。
 そのとき、カーン、カーンという音が聞こえた。昼休憩を知らせる鐘だ。

「あっ、大変だわ!」

 エノレアはハッとする。

「どうしましたか?」
「お昼ご飯の時間です! 今日は香草焼なんです。焼きたてを食べないと!」

 エノレアは早口で答える。
< 51 / 102 >

この作品をシェア

pagetop