雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

「報告は以上です。あの……もう退室してもよろしいでしょうか?」
「え? ええ」
「ありがとうございます!」

 エノレアは頭を下げて一礼すると、大急ぎで部屋を出ていく。レニオスとエドガーは、唖然としながらその後ろ姿を見送った。

「……香草焼き?」

 レニオスはぽつりと呟く。

「今日の食堂のメニューのようですね」
「ここの文官用の食堂は、そんなに極上の料理を提供しているのか? 俺の元には至って普通の料理しか届かないぞ」

 レニオスは少しムッとしてエドガーに尋ねる。

「いえ。町の食堂とさほど変わりないかと。王室専用のシェフが作っている殿下の食事とは、比べものにならない質素なものです」

 エドガーは困惑気味に首を横に振る。

「……朝ご飯を抜いて、腹が減ってたのか?」
「さあ?」

 レニオスは残された報告資料に視線を落とす。
 報告書の出来栄えは完璧だ。しかし、だいぶ変わった女であることは間違いない。

「エドガー。以前指示した、彼女の父親に関する情報は纏まったか?」
「それが……調べていく中で少々不審な点があり調査を継続中です」
「不審な点?」

 レニオスの視線が鋭くなる。

「彼女の父親について調査したところ、辺境の村で木こりをしているのは間違いありませんでした。周辺住民にも聞き込みをしましたが、不審な点もありません」
「では、何が不審なんだ?」
「エノレアは様々な知識について、父親に教わったと話していました。しかし、父親がただの木こりとなると彼女にそれらを教えたのは他の人間ということになります。ですが、教育係を務めた人間が見当たらないのです」

 エドガーは眉根を寄せながら、説明する。
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